引っ越しの荷物も運び出され、明日にはボクもこの家を出て行きます。今月中にあと2回くらいは帰ってくるかと思いますが、月末にはこの家も引き払うことになるので生活するという意味では実質的に今日が最後の日となりました。
カナダへの留学から帰ってきた彼女とこの家で一緒に暮らしはじめたとき彼女はまだ大学生だったし、ボクもまだ駆け出しのウェブデザイナーでした。ボクの安月給と彼女のアルバイトの給料とでギリギリの生活を送っていたのも懐かしく思い出されます。この家で一緒に暮らしはじめ、その5年後に結婚するとはね。お互いにこの5年間ではいろいろと苦労してきたのでたくさんの思い出がここには染みついています。
しかしまあここを出て行くという決断をしたのも自分たちだし、そういうわけで今日はちょっとしたホームシックの先取りみたいな心境に陥りながら家の中や窓から見た表の光景を写真に撮りました。ここで暮らすようになってすぐにこのブログをはじめたので、このブログにはここでの生活の記録という一面もあると思います。そう思うと少しは気が楽になるのはきっと過去の思い出が忘却の彼方へと消えていってしまうことに少しでも抵抗できるかもという希望のおかげかもしれません。
それにしても今日は家からたくさんの荷物が運び出されました。机と椅子と本棚と掃除機と衣類を入れているケース。たくさんの本が入った段ボールに食器やコーヒーミルやバスタオルや Wii の入った段ボール。荷物とは別に、大学のときにはじめて買った powermac 8600 と17インチの CRT モニターも処分しました。ずっと押し入れで眠っていたのでもう使うことはないだろうと思って、数日前に簡単にデータの消去だけしておいたのです。
引っ越しの荷物が運び出された後でTシャツがすべて持って行かれたことに気がついて愕然としましたが、脱いだままでまだ洗濯してなかったのがあったので慌てて洗濯して干しました。天気が良くて良かった。日中はずっと仕事をしてました。家で仕事するのも今日で最後です。それから夜は近所の韓国料理の店に行って焼き肉やらチヂミなんかを食べました。最近出来た店のようですがもう来ることはきっとないでしょう。
新しいものを得るということには常に何かを失うということが付きまとう気がして悲しくなります。その悲しさはでも少しボクには居心地が良くて、何かを失ったという記憶までもが失われたときにきっとその悲しさも忘れ去られるのでしょう。だからその悲しさを感じないわけにはいかないし、新しいものを得ない人生を歩むわけにもいかない。出来るだけ何かを失うことにボクは抵抗したくてブログを書いてるのかもしれません。記憶からなくなってしまえばそれはそもそも存在しなかったに等しいんじゃないかという恐怖が常に付きまとっています。なのでこの5年間の記憶をボクはこのブログに助けられながらこれからも妻と共有していくことが出来ることに幸せを感じています。
記憶を失うほどの恐怖は他にはありませんからね。