暴風、黒い汗、飛び散る夕刊

 大阪にいたときは雨の日を除いてほとんど毎日走っていたのですが(週に1回か2回雨が降ってくれるのでちょうどよい休みになった)、東京に戻ってきてからは(火曜日に戻ってきたのですが)水曜日の夜に走ったきりだったので土曜日は多摩川沿いを走ることにしていました。大阪での生活で走ることの楽しみを知り(走ることにくわえて、大阪での生活では家事をすることの楽しみをあらためて知ることになりました)、東京に戻ったら多摩川沿いを走ろうと決めていたのです。なぜ多摩川かというと、東京のマンションからだと電車で3駅分くらいはあるけど気持ちよく走ることのできる一番近い場所だからです。
 土曜日は午前中に走りに行こうと前の日から意気込んでいたのですが目が覚めたら12時を過ぎていました。バナナとみかんを食べてプロテインを水で流し込んでから外に出てみるとものすごい風が吹いていて驚きました。また空がどんよりと曇っていていつ雨が降り出してもおかしくない状態で一瞬走りに行くのをやめようかと思ったけど、大阪から東京に戻ってくることを前向きに考えようとしたときに力となってくれたことを簡単に諦めるわけにはいきません。どんよりと分厚い雲の下、強風が吹き荒れる中を電車に乗って多摩川沿いまで行きました。

 いざ川沿いに出てみると河川敷が広くて広くて川そのものが見えません。河川敷には野球をする少年たちがいたり散歩をする人たちがいたり小さな子供を連れた若夫婦がいたりボクと同じ目的で来ている人たち、すなわち走っている人たちがいました。空はどんよりと暗くて風は強く吹き、そして河川敷からはもうもうと砂埃が舞い上がっていました。遠くを見るとまず手前にぼんやりと黄土色をした空間があってその向こうに暗い雲が見える中を走り始めたのですが、多摩川ジョギングデビューとしてはこれ以上はない悪条件だったかもしれません。走っているうちに雨がぱらついてきたりもしたし、突風が定期的にボクの走るコースを邪魔したし、額の汗をタオルで拭いたら砂で黒く汚れる有様でした。大阪ではだいたい1時間で10キロ走るというのが定着していたので今回はさらにその先をと思っていたのですが砂埃が目に入り出したので45分くらいで泣く泣く走ることをやめました。走っているときは気がつかなかったのだけど奥歯をかみ合わせると砂がジャリジャリ音を立てました。
 それで再び電車に乗って帰ってきたのですが風は相変わらず吹き荒れていて、駅からマンションに向かう途中、何やら紙が舞っているなと思ったら倒れた新聞配達のバイクから夕刊が国道を渡って反対側にまで吹き飛ばされていました。ボクがそこを通りかかったときにちょうど目の前のマンションから新聞配達の人が出てきて無表情でバイクの方に駆け寄っていたのが印象的でした。新聞配達のバイクが風に倒されて新聞が道路を舞うなんて光景ははじめて見ました。この日は何台の倒れた自転車を見たことでしょう。こんなに強い風は台風以外では経験したことがありません。これも異常気象の一環なのでしょうか。この先、定期的にこのような強風がやってきては自転車を倒し河川敷に砂埃を巻き上げ配達中の夕刊を道路にまき散らすことになるのでしょうか。そしてこれ以上強い風が吹かないという保証は何処にもないのです。未来の世界ではジョギングするのも命がけなんてことになっているかもしれませんね。すべて人類のせいですが。

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