耳鼻咽喉科医の姿を借りた神

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 毎日朝起きるのが恐い。朝起きたときにどのような痛みが待ちかまえているのだろうかと想像するだけで夜眠るのも億劫になるというものだ。ここのところボクを悩まし続けているのどの痛みは強くなったり弱くなったりを繰り返しながら、全体としては収束する方向へと向かっているはずだった。少なくとも昨日の夜まではボクにそのような実感があった。
 ところが、である。『ところが』という接続詞をこのときのために取っておいたと言わんばかりにボクはそれを絶叫する。ところが、である。今朝起きてみたらのどの痛みは前日までとは幾分異なる様相を呈していた。痛みを感じる部位が異なることにまず気づき、しばらくしてからこれまで感じたことの無かった痛みというよりは違和感、異物感というようなものをより深い場所に感じたのだった。具体的にはこれまで感じていたのどの痛みは左側だけに感じるようになり、右側のより深い部分には何かがそこにあるような感触、食べ物を飲み込んだときにあきらかに引っかかる感触があった。そして何もしていないときでも右側の奥深くにはのどの筋が攣るような感覚があった。あくびをしようとするとのどの筋が引きつるように痛むのだ。
 これはもう素人の手に負えるものではないと思った。いくらネットで調べたってこの異物感を取り除く方法は医者の手を借りない限りは手に入らないと思ったので、会社の近くにある耳鼻咽喉科に行くことにした。それはそれでネットで見つけたのだけど、たった一件の口コミではあれとても優秀な医者の先生のようだったのでその耳鼻咽喉科に決めた。午前中の診察時間には間に合わなかったので午後の診察時間に行くことにした。念のため電話をしたらネットに載っていたのとは診察時間が異なっていたので、また実際の診察時間は3時からだけど2時半から受付はしていると言われたので2時半に会社を出て着いたらすでに待合室には15人くらいの患者が待っていたから驚いた。たしかに耳鼻咽喉科がにぎわうシーズンではあるのだろうけど、このシーズンに耳鼻咽喉科に行ったことがこれまでなかったのでボクはまるで実態を知らなかったのだ。
 診察時間までに受付を済ませておけばわりとすんなり見てもらえるだろうと踏んでいたボクはあまりにも現実を知らないオプティミストだった。そのようの者であるところのボクはおとなしく問診票に記入をし、おとなしく待合室の椅子に座って大江健三郎の小説を読むのでした。そこで発見したのは診察室に呼ばれていく人の数と新たにこの耳鼻咽喉科を訪れる患者の数がほぼ同じであるということでした。結果として待合室はメンバーこそ入れ変われど常に同じ人数の患者によって満たされるわけです。そんな法則を発見して悦に入っているうちに『君』付けで名前を呼ばれたので診察室へと向かいました。耳鼻咽喉科に足を運ぶのなんて何年ぶりのことでしょうか。おそらく小学生の頃以来かと思われます。椅子に座ってダンディーな耳鼻咽喉科医にここに至ることの顛末を一通り説明し、前の病院での処方箋を見せ(『のどの薬が出てませんね』と言われた)、のどの奥を見た医師はだいぶ腫れているといい、前の病院での薬を飲んで眠くならないかと聞かれてので眠くはならないと答えました。実際病院で処方された薬を飲んで眠くはなりませんでした。前の病院では風邪薬と花粉症の薬を処方されたのですが、のどの次に医師は鼻の穴を除きなにやら霧状のものをいろいろと吹きかけて調べた後でその花粉症の薬は効いていると幾分驚いた様子で結論づけていました。のどの薬とうがい薬を出すので、花粉症の薬と一緒に飲んでかまいませんと言われ診察は終わり、奥の部屋で何やら薬品名がカタカナで書かれた装置から伸びるホースの先にゴム製のマスクを付け、鼻と口に軽く当ててランプが消えるまで口で呼吸してくださいと言われたのでその通りにしました。処方箋を受け取って薬局で薬を受け取ったわけですが(ちなみにはじめてジェネリック医薬品を選ぶかどうかと聞かれた。うがい薬はすでにジェネリックのものだということだったけど、抗生物質は医師の意志でジェネリックでないものを選んではいるがボクの意志でジェネリックのものを選べるとのことだった。1日3回1週間分で100円しかかわらないということだったのでジェネリックは選ばないことにした)、診察の質から何からしてあきらかに前に行った病院とは内容がことなるものでした。はじめからこの病院に来ておけばここまで症状を悪化させることはなかったのかもしれないと思ってもすでにどうすることも出来ないわけですが。
 病院を出て遅めの昼食兼早めの夕食兼薬を飲むためにラーメン屋でラーメンを食べて薬を飲みました。会社に戻って数時間すると徐々にのどの痛みのとんがった感じが薄れていくように感じてきました。この2週間、いろんなのど飴や蜂蜜やら大根やらいろいろとのどに良いと聞けば試してみたけれど、たった3種類の錠剤でこんなに効果があるなんて医学ってすごいと思いました。昔の人だったらこのままのどが腫れて窒息死に至っていたかもしれませんしね。医学とそれを行使する医者というのは本当にすごいなと思います。

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