最近は大江健三郎の小説を好んで読んでいます。個人的な体験をまず最初に読み、それから空の怪物アグイー、万延元年のフットボールを読んで今は洪水はわが魂に及びを昨日から読み始めたところです。これらの小説をボクはたいへん面白く読みました。
幸いにも、というべきかどうか、ボクは大江健三郎の小説に限らず彼の著作物をほとんど読んだことがありませんでした。10代の最後くらいに彼がノーベル文学書を受賞したときに死者の奢り・飼育の文庫本を買って短編をいくつか読んだことがあるくらいです。13年前のそのころにどういうわけかボクは万延元年のフットボールの文庫本を買うのですがその小説を読むことはありませんでした。文章が難しかったという印象を持った記憶があるのですが、今読んでみるとけしてそんなことはないのです。おそらく真剣に取り組もうとしていなかったのでしょう。自分を甘やかすことに自覚的でありながらもそれを許すようなところが当時のボクにはあったように思われます。
いずれにせよ、今回いくつか読んだ大江健三郎の小説の中では万延元年のフットボールが飛び抜けて面白かったことを記さずにはおけません。中盤からのラスト200ページくらいは途中で読むことがやめられずに朝まで一気に読んでしまいました。すらすら読めるというとまるで3行ごとに段落が変わるような白地の目立つベストセラー小説みたいに思われるかもしれませんが、当たり前だけどそんなことはない。でもやはりボクにはすらすら読むことが出来たのです。物語の世界にかっちり入り込み、ボクは身動き出来ずに文章が体を貫いていくのをただ感じていただけといった方が(すらすら読める、というよりも)実際に近いかもしれません。13年前のボクには難解だと感じられたその文体が今のボクにはとても心地よく読むことが出来るのだから不思議なものです。まあたしかに13年も経てばいろんなことが変わってはいるけれど。
万延元年のフットボールをぜひ読んでみてください。本当に面白いしすごい作品だと思います。どう面白くてどうすごいかというのは読まないとわからないので、ぜひ読んでください。ボクはしばらくは大江健三郎の小説を読み続けることになると思います。というのも、万延元年のフットボールを読み終えたあとで洪水はわが魂に及びがアマゾンから届くのに1日だけブランクがあったのでそもそも個人的な体験と一緒に買った伊坂幸太郎のアヒルと鴨のコインロッカーを読もうとしてみたのですがあまりにも文章の密度が違いすぎて読むことが出来ませんでした。今のボクが求めているのとはたぶん大きく異なるんでしょう。時が経てばきっと面白く読めるんじゃないかなと思います。伊坂幸太郎の小説は読んだことがありませんが、信頼できる友人が面白かったと言っていたのでたぶん間違いないです。