『主人公は僕だった』を見ました

 主人公は僕だった(原題 STRANGER THAN FICTION)を見ました。
 現実の世界に存在する男がある日突然女性の声で自分の生活が物語られるのを耳にする。女性作家が書く小説の主人公が現実の世界に生きているというその設定だけを見聞きして知っていて、興味を惹かれつつもこれまで見る機会の無かった映画。それでまあ設定は魅力的だと思っていたけど最後をどのようにまとめ上げるのだろうというところで特に大きな期待を抱かずに見始めたのですが、これがとても面白かった。
 ボクが文学に興味があることもこの映画への興味をかき立てる要因のひとつではあると思うけど、見終えてとても心地の良い映画だった。書く側の作家も書かれる側の主人公もこの小説をきっかけにしてこれまでの自分の人生の行き詰まりを乗り越えることが出来たように思える。乗り越えた先の新しい世界がこれまでのものと比べて良いか悪いかはわからない。特に作家はこれまで自分の作風としていたものを変えたわけだからそれがどのような評価に繋がるかはわからない。実際に草稿と完成稿の両方を読んだ大学教授のリアクションは芳しいものではなかったように思える。それでも作家自身は明らかに以前よりは心地よさそうに見える。主人公の人生に行った修正はまるで作家自身の人生に行った修正のようにも見える。
 堅物で変人だった主人公が語り手の声に悩まされるという設定は実に奇妙で滑稽で、見ていて楽しかった。彼はきっと良い人なんだけど、作家がそのように設定したのか、それともそもそも彼自身がそういう人間だったのか。あるいは、作家が書いた物語が始まる以前は主人公は何処で何をしていたのか、とか考えはじめるとなかなか楽しい。3人称の語り手というモチーフを取り入れながら、それをカメラのレンズを通して見るという視点の二重性を感じながら心地よく(不器用な主人公に少しハラハラしながら)見終えることが出来ました。

Stranger Than Fiction
Stranger Than Fiction
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