阿部和重のピストルズを読了しました。とてもおもしろかった。
彼の小説はひとくせもふたくせもあって、そのくせのありかたが大変にボク好みでもあるのですが、この小説も実にそのような作品でした。他の作品への言及、自作品の援用、本気とも冗談ともつかないくらいに気合いの入った語り。そんなことあるもんかいなと最初は思ってしまうようなことでも、延々と数百ページも読んでいれば世界の中にしっかりと居場所を見付けられるものです。そのためには信憑性のある語りが必要で、実に延々とそれを見事に行った挙げ句の果てに、なんとも取って付けたようなひっくり返しによる裏切りがあり、自分が長い時間をかけて読んできたものはいったい何だったんだろうと放り出されてしまう、もしくは再度確認するためにまた一から読み直さなくてはならないという衝動に駆られてしまうような有様です。
きっとそれも作者にとっては織り込み済みのことなのでしょう。結果を提示、もしくはほのめかせておいて、しかし原因を最後の最後まで語らない、そこへ至る何百ページもの間、読者を飽きさせることなくむしろ結末へと急がせる語りは見事だったと思います。
しかしまあ、良くもこんな小説を書いたものだなあと思いますね。菖蒲あおばの語りがぶれないのは見事でした。
ピストルズの次は、年末に向けてノルウェイの森を再読し始めました。